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くろねことみ

黒猫十三

大倉 燁子

「キング 一二巻一号」1936(昭和11)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,366 字 · 29 页

青空文庫

3

と、頬を赤くして、

「私、辰馬さんの顔なんか、もう忘れちゃったわよ」

と媚を含んだ眼で、本庄の顔を見ながら云った。

「薄情な奴だなあ」

宮岡警部は起ち上って、時計を眺め、急に慌て出して、

「話はそれだけなんだが、――ではちょっと僕は出掛けて来ます。本庄君、君にはお気の毒だが、一時留置するよ。今夜の任務を果すまで、――まあこの部屋でトミーと話でもして居給え、直きに帰って来るから。――」

と云い終るか終らぬうちに、急いで扉の外へ出て行った。

3

直ぐ帰ると云って出たぎり、宮岡警部はなかなか戻って来なかった。その間に本庄と十三はすっかり親しくなっていた。話は多く黒猫ミミーについてであった。

「刑事部長さんから、護身用に頂いたの。恐い人に出会った時には、この猫を打つけてやるのよ」

と云った。ミミーは実によく馴されていた。十三が馳け出すとその後を追って走り、立ち侍って彼女が自分の胸を叩いて招ぶと、いきなり飛び上って、襟元に縋りつき、真白い首筋に頭をこすりつけて甘えた。

日暮れ頃になると両方とも益々はしゃぎ出した。その愉快そうに戯れ遊んでいるのを見ていると、大小の猫が縺れ狂っているとかしか思われなかった。