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くろねことみ

黒猫十三

大倉 燁子

「キング 一二巻一号」1936(昭和11)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,366 字 · 29 页

青空文庫

薄暗い室内の壁には踊っているような影法師が映っていて、黒ずくめの装いで敏捷に跳ね廻る十三の姿は、まるで黒猫のような感じだった。本庄は好奇心の眼を輝かせて見惚れていた。

夜になった。宮岡警部はどうしたのだろう、二人を置去りにしたまま、まだ姿を見せなかった。

「きっと、いまに、自動車で迎えに来るんでしょう」

と云って、十三は別に気を揉む様子もなかった。

十一時近くなって、彼女の云った通り自動車が玄関に停った。

運転台の窓から、宮岡警部は首だけ出して差招いた。

彼女はミミーを小脇に抱えて、自動車の窓に飛びついた。

「遅かったのねえ。お兄さん」と甘たるい声を出して、

「昨夜、失敗したから、――今夜はミミーを伴れて行くのよ」と云いながら、黒猫の頭を叩いて、

「ミミーさえいりゃ、成功疑いなしだわ」

十三は両手でミミーの胴中を抱いて、高く差上げ、

「しっかり頼むよ。ミミー!」と頬ずりしながら云った、その眼は緊張して、鋭い光を帯びていた。

本庄は宮岡警部の前に進み出て、無言で丁寧に頭を下げた。

「や、遅くなって。――」と云い、十三の方へ向いて、眉を寄せ、

「出掛けようとする処へ、生憎、捕物があってね。