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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

小原はきわめて手際よくかれらを鎮撫した、かれは平素沈黙であるかわりにこういうときにはわれ鐘のような声で一同を制するのであった。野球試合のときどんな難戦におちいってもかれはマスクをぬぎ両手をあげて「しっかりやれよ」と叫ぶと、三軍の元気にわかに振粛するのであった。

かれは一同を広場の片側に整列させた、何人も彼の命にそむくものはなかった、がしかし人々の悲痛と憤怒はどうしてもおさえきることはできなかった。一年を制すれば二年が騒ぎだし、二年を制すればまた一年がくずれる、さすがに四年五年は粛然として涙をのんでいる。

これらの動揺の波濤の中をくぐりぬけて小原は東西にかけずりまわった、かれは帽子をぬいでそれを目標にふりふり叫んだ。その単衣は汗にびしょぬれていた、かれはひたいから雨のごとく伝わり落ちる汗を手ぬぐいで拭き拭きした。

このさわぎのうちに人々は一層不安の念を起こしたのは三年生の全部が見えないことであった。

「三年がこない」

口から口に伝わって人々はののしりたてた。

「三年のやつは不埓だ」

だがこのののしりはすぐ一種の反撥的な喝采とかわった。

「三年は全部結束してつぎの駅の蕨で校長を見送るらしい」