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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

「うん」

「はりにひっかかってるのはかまぼこじゃありませんか」

「かまぼこは魚なり」

千三は子どものときからなんとなく黙々先生がこわかった。しかしかれとして学問をするにはこの私塾より他にはない。

翌日千三は夕飯をすまして黙々先生をたずねた、そこにはもう五、六の学生がいた、それは中学の二年生もあれば五年生もあり、またひげの生えた人もあり、百姓もあれば商家のでっちもある。千三がはいったときちょうど小学校の教師がむずかしい漢文を読んでいた。

「いかんいかん」と先生はどなった。「もっと声を大きくして漢文は朗々として吟ずべきものだ、語尾をはっきりせんのは心が臆しているからだ、聖賢の書を読むになんのやましいところがある、この家がこわれるような声で読め」

教師はまっかな顔をして大きな声で読んだ、先生はだまって聞いていた。

「よしっ、きみは子弟を教育するんだ、とかくに今日の学校は朗読法をないがしろにするきらいがある、大切なことだぜ」

先生はひょろ長いやせた首を伸ばして末座にちぢまっている千三を見おろした。

「きみ、ここへきたまえ」

「はあ」

「きみの名は?」

「青木千三です」

「うむ、なにをやるか」