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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

と三年がいった。

「降参とかなんとか、そんなことをいうから喧嘩になるんだ」と光一はいった。

「だっておまえの方で、かなわないからやめてくれといったじゃないか」

「かなうのかなわないのという問題じゃないよ、ただね、つまらないことは……」

「なにを?」

三年の群れからライオンとあだ名された木俣という学生がおどりだした、木俣といえば全校を通じて戦慄せぬものがない、かれは柔道がすでに三段で小相撲のように肥って腕力は抜群である、かれは鉄棒に両手をくっつけてぶらさがり、そのまま反動もつけずにひじを立ててぬっくとひざまでせりあげるので有名である。柔道のじまんばかりでなく剣道もじまんで、どうかすると短刀をふところにしのばせたり、小刀をポケットにかくしたりしている。

木俣がおどりだしたので人々は沈黙した。

「おじぎをしたらゆるしてやるよ、なあおい」

とかれは同級生をふりかえっていった。

「三遍まわっておじぎしろ」

光一はもうこの人達にかかりあうことの愚を知ったのでひきさがろうとした。

「逃げるかッ」

木俣は光一の手首をたたいた、筆記帳は地上に落ちて、さっとページをひるがえした。