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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

先生は炭だわらをおけの上に載せ、そのまま自分の肩を入れて歩きだした。

「先生! ぼくがかついでお宅まで持ってゆきます」

と千三がいった。

「いやかまわん、おれについてこい」

ひょろ長い先生のおけをかついだ影法師が夕日にかっきりと地上に映った。

「きみは病気か」

「いいえ」

「どうしてこない?」

「なんだかいやになりました」

「そうか」

先生はそれについてなにもいわなかった。

黙々先生がいもだわらを載せた豆腐をにない、そのそばに豆腐屋のチビ公がついてゆくのを見て町の人々はみんな笑いだした。ふたりは黙々塾へ着いた。

「はいれ」と先生はてんびんをおろしてからいった。

「はい」

もう日が暮れかけて家の中は薄暗かった、千三はわらじをぬいで縁端に座った。先生はだまって七輪を取りだし、それに粉炭をくべてなべをかけ、七、八本のいもをそのままほうりこんだ。

「洗ってまいりましょうか」

「洗わんほうがうまいぞ」

こういってから先生はふたたび立って書棚を探したがやがて二、三枚の紙つづりを千三の前においた。

「おい、これを見い、わしはきみに見せようと思って書いておいたのだ」

「なんですか」

「きみの先祖からの由緒書きだ」