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ああぎょくはいにはなうけて
ああ玉杯に花うけて
佐藤 紅緑
「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页
こうおじいさんがいったかと思うととっとと走っていく、その早いこと百メートル五秒間ぐらいである。
「待ってくださいおじいさん、お紙幣になるにはまだ早いから」
こういったが聞こえない。おじいさんは桜の中に消えてしまった。
にわかにとどろく軍馬の音! 法螺! 陣太鼓! 銅鑼ぶうぶうどんどん。
向こうの丘に現われた敵軍の大勢! 丸二つ引きの旗をへんぽんとひるがえして落日を後ろに丘の尖端! ぬっくと立った馬上の大将はこれ歴史で見た足利尊氏である。
すわとばかりに正行、正朝、親房の面々屹と御輿を護って賊軍をにらんだ、その目は血走り憤怒の歯噛み、毛髪ことごとく逆立って見える。
「やれやれッ逆賊をたたき殺せ」と千三は叫んだ。
「これ千三、これ」
母の声におどろいて目がさめればこれなん正しく南柯の夢であった。
「どうしたんだい」
「どうもこうもねえや、畜生ッ、足利尊氏の畜生ッ」と千三はまだ夢中である。
「喧嘩の夢でも見たのか、足利の高さんと喧嘩したのかえ」
「なんだって畜生ッ、高慢な面あしやがって、天子様に指でも指してみろ、おれが承知しねえ、豆腐屋だと思って尊氏の畜生ばかにするない」