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ああぎょくはいにはなうけて
ああ玉杯に花うけて
佐藤 紅緑
「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页
ふたたび犬がひきだされた、しゃもじと細井は犬と犬との鼻をつきあてた。「シナの時勢にかんがみておたがいに和睦したのにきさまはなんだ」と鹿毛がいった。
「和睦もへちまもあるものか、きさまはおれの貴重な鼻をガンと打ったね」
「きさまが先に打ったじゃないか」
「いやきさまが先だ」
「さあこい」
「こい」
「ワン」
「ワンワン」
すべて戦争なるものは気をもって勝敗がわかれるのである、兵の多少にあらず武器の利鈍にあらず、士気旺盛なるものは勝ち、後ろさびしいものは負ける、とくに犬の喧嘩をもってしかりとする、犬のたよるところはただ主人にある、声援が強ければ犬が強くなる、ゆえに犬を戦わさんとすればまず主人同士が戦わねばならぬ。
三年と二年! 双方の陣に一道の殺気陰々として相格し相摩した。
「おい」と木俣は巌にいった。
「犬に喧嘩をさせるのか、人間がやるのか」
「両方だ」と巌は重い口調でいった。
「うむ、いいことをいった、わすれるなよ」と木俣はいった。このときおそろしい犬の格闘が始まった。
犬はもう憤怒に熱狂した、いましも赤はその扁平な鼻を地上にたれておおかみのごとき両耳をきっと立てた、かれの醜悪なる面はますます獰猛を加えてその前肢を低くしりを高く、背中にらんらんたる力こぶを隆起してじりじりとつめよる。