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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

投手は馬夫の子で松下というのである、かれは十六であるが十九ぐらいの身長があった。ちいさい時に火傷をしたので頭に大きなあとがある、みなはそれをあだ名して五大洲と称した。かれの球はおそろしく速かった。

捕手は「クラモウ」というあだ名で左官の子である、なぜクラモウというかというに、いつもだまってものをいわないのは暗がりの牛のようだからである、身体は横に肥ってかにのようにまたがあいている。一塁手は「旗竿」と称せられる細長い大工の子で、二塁手は「すずめ」というあだ名で駄菓子屋の子である、すずめはボールは上手でないが講釈がなかなかうまい、かれは安場コーチの横合いから口をだしていつも安場にしかられた。

三塁手にはどんな球でもかならず止める橋本というのがある、かれはおそろしい勢いで一直線にとんできた球を鼻で止めたので後ろにひっくりかえった。それからかれを橋本とよばずに鼻本とよんだ。

外野にもなかなか勇敢な少年があった、ショートはチビ公であった、チビ公は身丈が低いが非常に敏捷であった、かれは球を捕るには一種の天才であった、かれはわずかばかりの練習でゴロにいろいろなものがあることを感じた、大きく波を打ってくるもの、小さくきざんでくるもの、球の回転なしにまっすぐにすうと地をすってくるもの、左に旋回するもの、右に旋回するもの