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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

ある、かれもあまり野球の知識はないほうだが、それでも覚平よりはすべてを知っていた。

「やあおまえさんもきてるね」と覚平がいった。

「おらあハア三度のご飯を四度食べても野球は見たいほうで」と善兵衛がいった。

「おれにゃわからねえ」と覚平がいった。

「じゃおらあ教えてやるべえ」と善兵衛はいった。

「ところで一杯どうです」

「これはこれは」

ふたりは一つのさかずきを献酬した。善兵衛はいろいろ野球の方法を話したが覚平にはやはりわからなかった。

「つまり球を打ってとれないところへ飛ばしてやればいいんです」

「なるほどね」

ふたりが草に座ってかつ飲みかつ語ってるうちに見物人は刻々に加わった。中学の生徒は制服制帽整然とうちそろうて一塁側に並んだ。その背後には中学びいきの大人連が陣取っている、その中に光一の伯父さん総兵衛がその肥った胸を拡げて汗をふきふきさかんに応援者を狩り集めていた、かれは甥の光一を勝たせたいために商売を休んでやってきたのである。

この日師範学校の生徒は黙々塾に応援するつもりであった、師範と中学とは犬とさるのごとく仲が悪い、だがこの応援は中止になった、いかんとなれば審判者は師範の選手がたのまれたからである、で師範は中立隊として正面に陣取った。