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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

こうかれは決心した。かれはすぐ手塚の家をたずねた。ちょうど勝手口に手塚の母が立っていた、光一は手塚の母がおりおり三味線を弾いているのを見たことがあるので、いつもなんとなく普通の人でないような気がするのであった。

「手塚君は?」

「まだ学校から帰りません」と母がいった。

「いいえお帰りになりました」と女中が横合いから声をだした。

「そうかえ」

「お着かえになってすぐおでましになりました」

「どこへいったんですか」と光一がきく。

「さあどこですか、なんだか大変にお急ぎでいらっしゃいました」

「活動じゃないかえ」と母がいった。

「そうかも知れません」

光一は一礼して外へ出た。

「活動だ、それにちがいない」

光一は手塚の母が平気で、「活動じゃないかえ」

といった言葉をおもいだした。

あの家では活動を見ることを公然ゆるしていると見える、お母さんが承知の上なのだ、それに対して学校がいくら活動を禁じてもなんの役にもたたない話だ。

一体あの家では手塚が学校から帰ったかどうかもよく知らずにいる、それでは手塚が外でなにをしてるかを知らないのも無理がない。

「手塚は不幸な男だ」

光一はふとこう考えると目が熱くなった、家庭に楽しみがないから、外に楽しみを求めるのだ、活動、飲食店、不良少女、遊びの友達! かくてかれはなぐられねばならなくなる。