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ああぎょくはいにはなうけて
ああ玉杯に花うけて
佐藤 紅緑
「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页
光一も同じく見まわした。かれは二階の欄干にひたと身体を添えて顔をかくしている手塚の姿を見た、はっと思ったがすぐ思い返した、いまここで彰義隊に知らしたら大さわぎになる。
「いないね」と彰義隊がいった。
「いないよ」
「畜生め、どこかにかくれてるんだ」
こういったときふたたび電灯が消えた。
「この間に手塚が逃げてくれればいい」と光一は思った。とこのとき彰義隊は拍手喝采した。
「やあやあ、近藤勇だ、やあやあ」
かれは「幕末烈士近藤勇」という標題を見て拍手したのであった。とすぐちょんまげの顔が現われた。
「あれは近藤勇か」と光一がきいた。
「ちがう、近藤勇はあんな懦弱な顔をしておらんぞ」
「きみは近藤勇を知ってるのか」
「知らんよ、だがあんな下等ないものような面じゃない」
「元来ちょんまげの頭は下等なものだよ、ぼくはあれを見るとたまらなくいやになる」
「それでも近藤勇ならいいよ、国定忠治だの鼠小僧だの、博徒やどろぼうなどを見て喜んでるやつはくそだめへほうりこむがいい、おれは近藤勇だ」
だが彰義隊君の期待するような近藤勇は現われなかった、のどに魚の骨を刺したような声で弁士は説明した、それによるといものような面は近藤勇なのである。