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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

弁論の題はこの席上で多数決で決めることになっている。

各自の抱負をのべること、

科学について、

英雄論、

この三つが提出された。英雄論を提出したのは手塚であった。司会者は採決した。英雄論が大多数をもって通過した。それはいかにも青年にふさわしき題であった。学生の眼はことごとく異様に輝き、その呼吸が次第にせまってきた。しかしだれあってまっさきに立つ者がなかった。すべてこういう場合に先登をする者はきわめて損である。いかんとなれば後の弁士に攻撃されるからである。中学生はことごとく手塚と柳の方を見やった。手塚はしきりにノートをくっている。光一は微笑している、師範学校側では野淵という上級生と矢島というのが人々に肩をつかれていた。黙々塾ではみながチビ公をめざした。チビ公は頭を縮めてひっこんだ。と、突然演壇に立った青年がある。それは例の浜本彰義隊であった。かれは剣道の稽古着に白いはかまをはき、紐の横にきたない手ぬぐいをぶらさげたまま、のそのそとテーブルの上の水さしからコップで水を飲んだ。

「水を飲みにあがっちゃいかん」とだれかがいった。実際彰義隊は弁舌がへたなので何人もかれが演説をすると思わなかったのである。