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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

こういうことはめずらしくない。青年の喧嘩だ。毎日一つぐらいはあるのだ。

「だがねえ、文子はこのごろちっともこないじゃないか」

ひとりの声がきこえる。

「手紙を見られたらしいよ」と他の声。

「見られてもかまやしない、あれはねチビの名にしてあるんだから……はッはッはッチビのやつそれでひどくなぐられたっけ」

千三の総身がぶるぶるとふるえた。かれははじめてそれが手塚の奸策だと知ったのである。かれは立ちあがってかれらのあとを追いかけようと思った。が足の痛みは骨をえぐられるようにはげしい。

「待て畜生! ああいまいましいな」

千三は足をきびしくしばった。そうして残りの布ではなおをすげた。とこのとき五、六間先に叫び声が起こった。

「なにをするんだ」

「たたんでしまえ、やれやれ」

「どこだ」

「ここだ」

「こん畜生!」

なぐり合う音、倒るる音、ばたばたと走る音。

「おいおいみんなこい」とよぶ声。

「生意気な、きさまは手塚だな」

こういう声は光一であった。千三ははっとおどりあがった。かれは片方のげたを手に持ったまま走りだした。と見ると三人を相手に光一は奮闘最中である。一旦逃げたふたりは引きかえして共に光一につかみかかった。