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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

チビ公の声は涙にふるえていた。

「なにをぬかすかばか」と伯父さんがどなった。

「商売ができなかったらやめてしまえ、商売をしたからって助役の息子に食われてしまうばかりだ」

伯父さんはのそのそと歩きだした、かれは門の外になくなく立っている妹(チビ公の母)を見やって少し躊躇したが、

「あとはたのむぜ、おれは強盗の親玉を退治たんだから、これから警察へごほうびをもらいにゆくんだ」

母がなにかいおうとしたが伯父はずんずんいってしまった、ひとりの巡査と、ふたりの町の人がつきそうていった。チビ公と母はどこまでもそのあとについた、伯父さんは警察の門をはいるときちらとふたりの方をふり向いた。

「困ったねえ」と母がいった。

「阪井にけがをさしたんでしょうか」

「そうらしいよ、たいしたこともないようだが、それでも相手が助役さんだからね」

「今晩帰ってくるでしょう?」

「さあ」

ふたりは思い思いの憂欝をいだいて家へ帰った、母は戸口に立ちどまって深い溜め息をついた、かの女は伯母のお仙をおそれているのである、伯父は親切だが伯母はなにかにつけて邪慳である、たよるべき親類もない母子は、毎日伯母の顔色をうかがわねばならぬのであった。