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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

「いやなのかい」

「お志は感謝します。だが柳さん」

千三はふたたび沈黙した。肩をゆする大きなため息がいくども起こった。

「わがままのようだけれどもぼくはお世話になることはできません」

「どうして?」

「ぼくはねえ柳さん、ぼくは独力でやりとおしたいんです、人の世話になって成功するのはだれでもできます、ぼくはひとりで……ひとりでやって失敗したところがだれにも迷惑をかけません、ぼくはひとりでやりたいのです」

「しかしきみ」

光一は千三の手をきびしくにぎりしめてじっと顔を見詰めたが、やがて茫然と手を放した。

「失敬した、きみのいうところは実にもっともだ、ぼくはなんにもいえない」

庭の茂りのあいだから文子の声が聞こえた。

「兄さん! ご飯よ、今日はコロッケよ」

「そんなことをいうものじゃない」と光一はしかるようにいった、文子の声はやんだ。

「どうか悪く思わないようにね」と千三がいった。

「いや、ぼくこそ失敬したよ」と光一はいった。

「いままでどおりにお願いします」

「ぼくもね」

ふたりはふたたびかたい握手をした。

「コロッケがさめるわよ」と文子は窓から顔をだしていった。

「うるさいやつだな」