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ああぎょくはいにはなうけて

ああ玉杯に花うけて

佐藤 紅緑

「少年倶楽部」1927(昭和2)年5月号~1928(昭和3)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 126,617 字 · 250 页

青空文庫

と捕手の小原がいった。

「無論だ、学校を焼いてしまえ」とライオンがいった。

「へんなことをいうな」と捕手はライオンをしかりつけて、「こんどこそはだぞ、諸君! 関東男児の意気を示すのはこのときだ、いいか諸君! 天下広しといえども久保井先生のごとき人格が高く識見があり、われわれ生徒を自分の子のごとく愛してくれる校長が他にあると思うか、この校長ありてこの職員ありだ、どの先生だってことごとくりっぱな人格者ばかりだ、久保井先生がいなくなったら第一カトレット先生がでてゆく、三角先生もでてゆく、山のいも先生も、ナポレオン先生……」

「最敬礼も」とだれかがいった。

「まじめな話だよ」と捕手は怫然としてとがめた、そうしてつづけた。

「いいか諸君、久保井先生がなければ学校がほろびるんだぞ、ぼくらはなんのために漢文や修身や歴史で古今の偉人の事歴を学んでるのだ、『士はおのれを知るもののために死す』だ、いいかぼくらは久保井先生のため浦和中学のため、死をもってあたらなきゃならん」

「それでなければ男じゃないぞ」と叫んだものがある。

その日学校の広庭に全校の生徒が集まった、そうして一級から三人ずつの委員を選定して事実をたしかめることにした、もしそれが事実であるとすれば、全校連署のうえ県庁へ留任を哀願しようというのである。