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あとがき(『みやもとゆりこせんしゅう』だいさんかん)

あとがき(『宮本百合子選集』第三巻)

宮本 百合子

「宮本百合子選集 第三巻」安芸書房、1947(昭和22)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,830 字 · 4 页

青空文庫

しかしこの作品の範囲では、少年である主人公が、厄介な偶然を自覚して苦しみを感じはじめるこころまでがかかれた。

「我に叛く」は、その後にかかれた長篇「伸子」の短く途絶えた序曲のような性質をもっている。あるいは、嵐がおそって来る前の稲妻の閃きのような。「白い蚊帳」は時期から云えば「我に叛く」より数年あとになるが、これも或る意味では「伸子」に添えてよまれるべき性質の作品と云える。

「伊太利亜の古陶」には、上流社会ずきの中流人の諷刺がある。中流といっても「牡丹」に描かれたような日かげの、あわれはかない人々の人生の姿もある。「牡丹」は、駒沢の奥のひっそりした分譲地の借家に暮していたころ、その分譲地のいくつかの小道をへだてたところにある一つの瀟洒たる家におこったことであった。

「小村淡彩」「一太と母」「帆」「街」はどれも一九二五年から二六年ごろにかかれた。日本の文学には無産派文学運動が擡頭していて、アナーキズムとボルシェビズムの対立のはっきりしはじめた時代であった。蔵原惟人・青野季吉その他の人々によって、芸術の階級性ということが主張され、文学の社会性の課題がとりあげられていた。