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あとがき(『みやもとゆりこせんしゅう』だいにかん)
あとがき(『宮本百合子選集』第二巻)
宮本 百合子
「宮本百合子選集 第二巻」安芸書房、1948(昭和23)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,610 字 · 8 页
作者が恋愛した人との現実で苦しんでいた、人生に対する対手の狐疑、逡巡は、貧困や孤独な生活経験からたくわえられたものであった。作者が重い比重で自分の存在にのしかかって来て、深い悲しみを与えられた人間のそういう気持を、資本主義社会の逆境で歪んで来た人間性においてとらえ作品化すことが出来ず、反対に、有閑の上流生活において腐敗させられてゆく人間の生活力として把えているところも面白い。作者は計らずも、自身にとってその害悪の実感される環境において、人間性の浪費の悲劇を描いたのだった。
「三郎爺」は一九一七年にかかれた。「古き小画」とは数年をへだてている。それにもかかわらず、一つの面白い共通点がある。作者はこの二つの作品のどちらにおいても、封建的な主従関係をある点では全く無批判にそれなりのいきさつで描き出している。しかしながら物語の最後ではそういう形で人との間にきめられている関係が、三郎爺をもルスタムをも、哀れむべき存在とし残酷に扱われた人間としていることを作者が見のがしていないことである。そして、それを見のがさず、むしろその一点に人間的哀感を傾注してテーマを展開させてゆく作者の心を支配しているのは、今日で云われる反封建の意識でもないし、階級性とよばれるものでもない。