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あめんちあ

あめんちあ

富ノ沢 麟太郎

「改造」1911(明治44)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,594 字 · 83 页

青空文庫

彼は親友をいままで見誤っていたのであろうか。

しかし彼は親友の言葉を意地悪く受けいれてみたとしたところで、どうして悪かろう。

そうして若しも彼が親友を欺いたとしても、彼自身の虚勢は本物の虚勢であったろうか。

それが果して本物であったとするなら、それこそそれは、嫉妬の感情などを持つも恥かしい彼が、自分の親友に抱いた嫉妬の感情ではなかろうか。

そうして彼は僅かばかりの考えと僅かばかりの感受性とをもって、幻の表現に過ぎないこの人間生活のなかから、あらゆるものを見た目だけで確実なものであると見取ったこのことを、彼は恥かしく思いはじめた。

彼はものの影――言葉の言葉、動作の動作――を見極められないことを情なく思った。

彼は重々しい霧のなかを彷徨うているかのようであった。

突然、彼は人の歔欷を耳にしたように感じた。

その歔欷は何処からともなくかすかに流れてくるともなく彼自身の胸のなかへ深く泌み込んできた――彼はただ一人淋れはじめた秋の末の庭先の縁へとりのこされていた。

親友は彼一人をそっととりのこしてそこを立ち去っていた。

――そのことに気づくと、彼は自分が噎び泣きしているのであると思うより外はなかった。