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あめんちあ

あめんちあ

富ノ沢 麟太郎

「改造」1911(明治44)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 41,594 字 · 83 页

青空文庫

彼女の離別の言葉は、彼を悲しませた。

そうして間もなくして、その言葉は、彼女のこの世への死別の言葉となってしまった。

――その時彼女は一人の少女の母親であったと、少年であった彼は聞いた。

彼は花嫁姿の彼女を目前に見たように感じた。

その彼の幻想に映じた彼女の姿は、ただ光り輝く眸ざしが深い印象を残した。

そうしてその後、彼は夢のなかで、彼女に逢った。

しかしその時、彼女は、その姿の消える瞬間に、朱の色をした顔へ形の大きな真白な眸を現わした。

――彼は自分自身が怕ろしいと思った。

そうしてその後、彼の生活は一匹の虫の生活にも値しなくなった。

彼は地上を這い廻った。

彼は一種の処女機械のような成人になった。

極く短い期間のうちに、彼の躯は陰鬱と恐怖と悲嘆との雲に覆われた。

彼は純粋と情熱とを失った。

――少年の智慧を失った。

――疑惑は彼を捉えた。

――そうして彼は、悲しくも彼自身を見失ってしまった。

―――――

お柳が現れた。

――あの女と全き「同一性」を持ったお柳は、忽然として彼の目前を過ぎて行った。

――お柳があの女の子としたなら。

――年限から言ってもそんなことはあり得ない。

――彼女自身?――彼は刻み込むような戦慄を感じた。