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あるニュー・フェイスへのてがみ

あるニュウ・フェイスへの手紙

岸田 国士

「演劇 第一巻第一号~第七号」1951(昭和26)年6月1日~12月1日、「演劇 第二巻第一号~第二号」1952(昭和27)年1月1日~2月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,146 字 · 96 页

青空文庫

僕自身は、歌舞伎や新派の「声」を決してありがたいものと思ってはいません。むしろ、甚だ耳ざわりな、極端にいえば生理的嫌悪を催させる「不健康」な声だと信じていますが、見方によれば、あれはあれなりに「鍛えられた声」の一種で、人によっては快感を覚えるらしい。ところが、新劇のセリフは、発声法などという近代的、合理的な勉強を一応していながら、どうも、「声」として、ヴォリゥムも味いもなく、従って力強くも快くも響かないのです。つまり、なんとなく貧弱で、無理に搾り出すようなところがあり、しばしば調子が狂いそうな危っかしさを感じます。観ていると、どうも、はらはらし、聴きとるための努力を強いられ、セリフがいたずらに長いような気のすることは、珍しくない。

これはいったいどうしたものでしょう?

なるほど、新劇畑にも、ややどっしりした、陰翳のある、聴いていてそう倦きの来ない声をもった男女優が二、三います。が、その他は、みんなと言っていいほど、声がわるい。

僕は、俳優にいわゆる普通の「美声」を求めてはいません。条件は、よく通ることと、聴いていてどこか惹きつけられることと、ただそれだけでいいのです。