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あるニュー・フェイスへのてがみ
あるニュウ・フェイスへの手紙
岸田 国士
「演劇 第一巻第一号~第七号」1951(昭和26)年6月1日~12月1日、「演劇 第二巻第一号~第二号」1952(昭和27)年1月1日~2月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,146 字 · 96 页
それはそうと、いつ頃からか、しきりに政治家官僚によって用いられている、「演説口調の敬語」は、甚だ耳ざわりです。「政府と致しましては」「解散に相成りまする……」「これをもちまして、本日の会議は……」の如き、その一端です。
ことに論外と思われるのは、以前には、地方出の無学な女中の失態として笑い話になったようなとんちんかんな敬語を、この頃では、平気で、そのへんの紳士淑女が使っていることです。ここで紳士淑女とは、男女学生を含むこともちろんです。
最後に、現代の日本語のみじめな性格のひとつに、「はっきりものを言う」ことを憚るような調子が、どことなくひそんでいるのを、僕は数えたい。
これは文章でもそうですが、ことに対話の場合、無意識に使う言葉の「アヤ」にそれがみられます。
相手とまったく反対な意見を述べる時、「それはそうですが」と、一応肯定してかかるのは、いったいなにごとでしょう?
なになには好きですか、と問われて、「好きは好きですけれど……」と、よく条件づきの返事をするひとがいます。
店へ買物にいって、ほしいもののあるなしをたずねたりすると、これに似た返事をきかされることがあります。