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あるおとこのだらく

ある男の堕落

伊藤 野枝

「女性改造 第二巻第十一号」1923(大正12)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,585 字 · 27 页

青空文庫

彼がさっそくに思いついたのは、留守の間を働いてくれた人達の慰労会をすることでした。彼は私の手料理を望みましたので、その日取りの前日に、私はOと一緒にその材料の買い出しに出かけました。食物に飢えたOの眼には、走りものの野菜がことに眼をひきました。私達は、筍や、さやえんどうや、茄子や、胡瓜や、そんなものをかなり買い込んで帰ってきました。Oは、私が料理をするときにはいつもするように、野菜物の下ごしらえの手つだいをしていました。そこにMさんがYを連れて見えました。

その日招待した客は、内にいる四五人と、他に雑誌の上に直接の援助を与えてくれた、二三の人達だけでした。それだけでも、私共の狭い家と乏しい器物では多すぎるのでしたが、さらに二人のお客がふえたことは大変な番狂わせになります。私はいろいろ思案をしながら、そして、今日のせっかくの慰労会に無遠慮なYに割り込まれるのは困ったことだとおもいながら、働いていました。

すると間もなく二人のお客様は帰ってゆきました。

「帰りましたの?」

私は台所に、またはいってきたOを見上げながら訊ねました。

「ああ帰った。Yの奴、Mが帰ろうというと、『三月だというのに筍の顔なんか見て帰れるかい。