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いとこどうし

いとこ同志

宮本 百合子

「女学生」1920(大正9)年5月創刊号、6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,760 字 · 16 页

青空文庫

樹木でさえ、親木が年寄って倒れれば、きっとその傍から新らしい若い芽生えが出ますでしょう。まして人の心は樹や草などより、もっともっと微妙なものです。

それ故、政子さんが、お亡くなりに成った両親を思うものなら思うほど、自分の中に遺して行って下さったよい心美くしい心を育てて、真個に立派な人になるように心掛けるのが、第一の務だったのです。

けれども、政子さんは、そうは思いませんでした。先ず自分の可哀そうな身の上に気が付くと一緒に、お友達中から、可哀そうがって同情されたくなりました。

『まあ政子さんはお可哀そうね、お父様もお母様もいらっしゃらないで……何てお気の毒なのでしょう。淋しいでしょうね、苦しい事が沢山おありになりますでしょう』

と云って貰いたくなったのです。

政子さんにそう云う心持が起って来ると、世界中が、急に辛く、悲しく、意地悪いもの許りの集りのように見えて来ました。

物を見るのも、感じるのも、みな心の働でございますものね。政子さんが、そういう心持になれば、直ぐ何でもが、心の思う通りに見えたり感じられたりするのは、あたりまえです。その日も、いつもの通りお昼休が来ると、政子さんは淋しそうな顔をして、校舎の裏にある芝生へ参りました。