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うすゆきしょう
うすゆき抄
久生 十蘭
「オール讀物」1952(昭和27)年1月号~3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,454 字 · 59 页
道長は父に似た骨太の巌乗づくりで、血の気が多く、なにかといえばいきりたち、うぬ、とか、おのれめらは、とか荒けた声をだす癇の強い子供だったが、打刀を持つようになってからは、いよいよ思いあがった容態になり、生毛のはえた頬に懸髯をかけ、市のたつ賑やかなところへ出かけては、わけもなく棚の八百物をとって投げ、道端の魚籠を蹴返し、憑きものでもしたように暴れくるい、結局は袋叩きにされ、傷をつけて帰ってくる。気狂いに刃物を持たしたような埓のなさで、これでも困ると眉をひそめていたが、二年ほど前の夏、祭礼の雑踏の中で力んでまた叩かれ、逃げだしたところをうしろから斬りかけられ、大きな傷を背負って帰ってきた。
道益はふるえのでるほど仰天し、箱根の木賀の湯は金創にも逆上にも利くというので、供をつけて湯治にやったところ、五日ばかりして、夜遅く一人で帰ってきた。どうしたのかとたずねると、道長は四角に坐って、内密に申しあげたいことがあるという。奥の間へ行くと、道長は昂然たる態で宣言をあげた。
「木賀の湯ではからずも、敵にめぐりあいましたので、討果して帰りました」
「恐ろしいことをいうの。