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うつす
うつす
中井 正一
「光画」1932(昭和7)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,121 字 · 7 页
すらある。一つの声が無限の空間の中に喚びかえし、木魂し反響するその深い感興こそ、胸の中のあらゆる幾山河に響かうそのひびきにもそれは似るであろう。
かかる反響、射影こそ芸術の原現象の象徴でなくてはならない。移し、映し、覆す、すべての現象は、かかるただちに声をうつしあう射影的現象でもなくてはならない。言葉の母音ならびに子音のあい反映する領域がすなわち文字の韻律である。音響の種々の変容による射影現象が作曲の意味でもある。
うつすという現象の中にこそ深い芸術の原現象がなければならない。
すでに日本語ではかたちという視覚の根源的現象がすでにうつすという現象と関連をもっている。
かたという言葉は辞書に見れば象、形、容、態、型、式、跡、質、の漢字をあてるごとく、存在のものではなくして、等質的に抽象されしその外輪、あるいはその外輪がほかのものに等値的に痕せし射影、さらにその等値性よりして、それと交換しうる異質的存在を指し示す。『執語』の「ほととぎすのかたをかきて…………」『神代記』の「国造被神之象(みかた)」は形、象、容、態を意味する。小紋のかたあるいは「ささらがた錦のひもを…………」