轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
おもかげ
おもかげ
宮本 百合子
「新潮」1940(昭和15)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,997 字 · 20 页
その国で朝子が初めて過した冬からこの春へのうつりかけ、日増しに暖くなる太陽で朝からひどい泥濘の雪解けがはじまり、市街じゅうはねだらけ、通行人の陽気な罵言だらけという季節、保から、今度大変いい温室が出来たと知らしてよこした。本式にボイラー室のついたので、それは保が高校へ入学したお祝いに予て約束のあったのを拵えてくれたものだというのを読んで、朝子は何だかそのことに馴染めない気がした。保は花作りがすきで、小学校時分からミカン箱へシクラメンの実生を育てたりしていた。出来たものならば十分使えばいいけれども、それだけの温室を建てるに使った金で貧しい高校生は恐らく一ヵ年以上生活出来るだろう。それを保は知っているだろうか。朝子は自然の感情から何心なくそういう意味を云ってやった。すると怒りが字にまで出ている多計代の筆で、純真な保の唯一のよろこびにまで傷をつけずにはいないあなたは、云々と云って来、同時にまるで人目をしのんだような一枚の外国葉書に、保自身が例の細いこまかい字の横書きで、手紙の礼と、温室については僕は一遍もそういうことは考えてみなかった、僕は大変愧しいことだと思ったと、終りの一句にアンダラインしてよこした。