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おもちゃのこうもり
おもちゃの蝙蝠
佐藤 春夫
「童話」1922(大正11)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,395 字 · 3 页
そしてすぐ新らしいゼンマイと取りかえて、それを巻くとコーモリを手に持ったままおさえていた羽根をはなした。パタパタパタ……と飛んで来た時の元気なさにくらべて、ヒコーキのように威勢よくそれは羽ばたきを初めた。
「オーライー!」
職人はこう叫んでコーモリを窓から外へ投げ出してやった。するとコーモリはそのままツーとまっすぐに、風車の仕掛で廻っている広告塔の方へ向って消えて行ってしまった。それを見送りながら職人はまたパイプをくわえて、元のように腰をおろした。
ところが次の日の夕方に、またそのコーモリが舞いもどって来て言った。
「天が高くて昇られない。」
職人はすぐそうかと気軽に言って、今一度、新らしい、そして丈夫なゼンマイと取りかえてはなした。今度は、コーモリは前と反対に西の方へ非常に速く飛んで行った。
ところがコーモリは、その次の日も同じようにもどって来て、同じことをくり反した。
「天が高うて上られない。」
やっぱり同じことを言うのである。何と手のやけるコーモリだなあ――と、職人はさすがにいくらか気をくさらせながらも、その店の棚の上からブリキ製の機関車を取りおろして、それについていた一番強いゼンマイと取りかえてはなしてやった。