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おくみさんとそのしゅうい
お久美さんと其の周囲
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第一巻」河出書房、1951(昭和26)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,369 字 · 149 页
「ねえお内儀さん。
一体彼の重三さんてえのはどうした人なんです。
と云い出した。
お関は努めてせわしそうに帳面から目を放さずに、
「重三かえ、
どうした人ってお前家の養子だろうじゃあ無いか。
何か彼れがしたかい。
と非常な不安を以て云った。
「いいえ何も仕た訳じゃあ有りませんがね、
恐ろしくおのろですぜ。
よく彼那のを養子になんか仕なさいましたね。
まるで三春の馬車屋っても有りゃしない。
「何だね、そんな毒口を叩いて。
彼れだって主人格な男なんだよ、お前から見れば。
そんなにつけつけ云ってお呉れでないよ。
「有難い御主人さね、へっ。
恭は地面に叩きつける様に唾を吐いた。
「まあお前、今日はどうかして居るね。
「もうとっくに如何うか仕て居ますよ、
御陰様で。
ねえ、お内儀さん、
彼の重三って人を貴女は後とりに定めたんですか。
「そうさね、
定めずに連れて来る者は居ないじゃないか。
「へえ、そうですか。
あんな薄馬鹿にゆずるんですか。
そいじゃあ一体私はどうなるんです。
このまんま御払い箱はひどすぎますぜ。
お関は急に今までの恭の様子がすっかり飲み込めた。
「何だね、そいじゃあお前は此の家を望んで居たんだね。