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おくみさんとそのしゅうい
お久美さんと其の周囲
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第一巻」河出書房、1951(昭和26)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,369 字 · 149 页
ほんとうに町の人でも中に入って御覧なさい、
皆知れて貴方は赤い着物だのにね。
一日たのまれもしない人の世話を焼いて自分の始末も出来ないなんて、お話しにも成りゃあしない、馬鹿馬鹿しくて。
と責め立てても、畳の上にごろ寝をして煤のたまった天井をながめながら主人は、
「俺は知らんよ、
勝手におし。
お前みたいに怒鳴ったら使った金が戻るだろうよ。
なあ重。
と、傍に長く成って居る重三に同意を求める様な事許り云って真面目に聞こうとも仕なかった。
「重、お前も少しは考えておくれな。
私一人でどうにも成るもんじゃあない。
と泣き就いても重三は重三で、
「わしは何の事か知らん――お阿母さん。
と云う許りなので、お関は気でもどうか成りゃあ仕まいかと思う程無茶苦茶に成って仕舞って、陰気な様子でせっせと動いて居るお久美さんを罪も無いのに当り散らしたり故意と引きかぶった様子をして一日長火鉢の傍へ、へばり付いて居たりした。
一日一日と立つに連れて贔屓目で見て居るお関にも重三の足りないのが目に余って来るので、自分の夫、周囲の人全体を偽って其那子を連れ出して来た罪が皆自分一人に報いられて来る様な気がして居た。