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おくみさんとそのしゅうい
お久美さんと其の周囲
宮本 百合子
「宮本百合子全集 第一巻」河出書房、1951(昭和26)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,369 字 · 149 页
お関は正直者が勝を必ず占める世の中ではない事を知って居るのだった。
人間は妙なもので、偽だと十中の八九までは分って居ても、嘘を云う者が余り押し強くその立ち場を守って居ると、却って、それじゃあ自分の方がと云う怪しみが湧いて来るものである。
そこを上手く利用する丈お関は世間を見知った年頃であった。
所謂正直な者達は難なくその手に乗せられて、多くの者の中には、
「ほんとにお関さんの様子を見るとどうしたって其那事が有ろうとは思えませんよ。
一寸でもやましい所のある人があれ程何でもなく落付いて居られるものですか。
うっかりした事は云われないものですね。
等と云う者が出来て来ると、皆が皆いつの間にかその気持になって、
「ほんとに飛んだ噂の立ったものですね。
一体火元は何処なのでしょうね。
お関さんこそ好い迷惑だと云うものですよ。
等と臆病らしく自分等の風評を立てた責任を何処かへ押しつけ様押しつけ様と仕始めた程であった。
お関はつまり勝利を得たのであった。
自分の技倆に非常の自信を持つ様になったお関はすべての行為を前よりも数倍大胆に大股に行って行ったけれ共、恭吉に対して丈は何となし一目を置かなければならない何物かが有る様に感じて居た。