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おくみさんとそのしゅうい

お久美さんと其の周囲

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第一巻」河出書房、1951(昭和26)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,369 字 · 149 页

青空文庫

、第3水準1-91-24)子はお関に連れられてそこに来た。

その葡萄園は低い生垣で往還としきられて乗り越えても楽に入れる程の木戸から出入をする様になって居た。

葡萄と云えば藤づるの籠か紙袋に入ったの許りを見なれて居た小さい※(「くさかんむり/惠」、第3水準1-91-24)子はまるで南瓜の様に大きい勢の好い葉が茂り合って、薄赤い赤坊の髪の毛の様にしなしなした細い蔓が差し出て居る棚から藤の通りに紫色に熟れた実が下って居るのを見た時はすっかりおどろいて仕舞った。

地面には葉の隙間を洩れて来る夏の日光がキラキラときららかな色に跳ね廻り落ちた実が土の子の様に丸まっちくころっとしてあっちこっちにある上を風の吹く毎にすがすがしい植物性の薫りが渡って行った。

葉ずれの音は※(「くさかんむり/惠」、第3水準1-91-24)子が之まで聞いた何よりもきれいだと思った程サヤサヤと澄んだ響を出し、こんなに広い広い園の中一杯に自分勝手に歩き廻る事もかけ廻る事も出来ると思うと空想的だった※(「くさかんむり/惠」、第3水準1-91-24)子は宇頂天に成って、自分が、自分でよく作っては話して聞かせるのを楽しみにして居た「おはなし」