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おくみさんとそのしゅうい

お久美さんと其の周囲

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第一巻」河出書房、1951(昭和26)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,369 字 · 149 页

青空文庫

お関は負け嫌いで小さい内からかなり身巧者に働いた代り何か気に入らないと、引きつめに毛の根のふくれる程きっちり銀杏返しに結って居るお駒の髷をつかんで引っぱったり、後からいきなり突き飛ばして、小柄な妹が毬の様に弾んで行って突調子もない柱等にいやと云う程体を打ちつけて泣き出したりするのを見て面白がって居た。

近所では「あばれ娘のお関坊」と云う名を付けられて居たけれ共その文盲な親達はせっせっせっせとお関の働くのを何よりと思って居たので、

「家のお関も手荒らですが働きますからこんな貧亡者には下されものですよ。

と自慢さえして居た。

そして何でも内場に内場にと振舞って体なども親に似げなく骨細に出来て居るお駒を却ってどうでも好い様に取り扱かって、祭りの着物なども、

「姉ちゃんは働くからな。

とお駒に去年のままをあてがって、お関にだけは新らしいのを作ってやったりするので益々図に乗ったお関は家中の殆ど主権者と云って好い位自惚れて勝手気ままに振舞って居た。

何にしろそう大して織物の出ると云うでもないY市のしかも小機屋であったお関の家が年中寒い風に吹かれて居たのは明かであった。