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おくみさんとそのしゅうい

お久美さんと其の周囲

宮本 百合子

「宮本百合子全集 第一巻」河出書房、1951(昭和26)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 75,369 字 · 149 页

青空文庫

「まあそう。

そいじゃあもっとどしどし云ってお遣りになれば好いじゃあ有りませんか。彼方の家へも山田の方へも。

「けれども又そうひどくも云えないからね。

「でも証文や何かを皆山田へお預けなさったの。

「証文は私が持って居るがね。

万事好い様におねがいするとは云って置いたのさ。

それでね、お前に一つ云ってもらいたいんだよ。

東京から云われて来たって云う事をね。

「だって私にそんな談判が出来るもんですか。

一口で凹まされて仕舞うでしょう。何にも知らないんですもの。

「そんな事あるもんかね。

私より字も書け、読めもする癖に、そんな事が出来ないなんて事はないよ。

ほんとに行っておくれでないかい。

「だってお祖母様。

外の事なら仕てあげるけれど……

「そんな事云わずとさ。

いろんな家の事の相談相手に成れるからこそお前だって来た甲斐が有るんじゃないか。

「相談相手にはなる事よ、いくらでも。

だって私貸し金の催促に行かせられるのは生れて始めてですもの、厭だろうじゃ有りませんか。

誰か外の人におしなさいよね、お祖母様。

「いいえ、お前が好いんだよ。

東京の家でもどうにか仕たいと云って居ますからと云って様子だけ見て呉れれば充分だから。