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おひめさまとこじきのおんな
お姫さまと乞食の女
小川 未明
「童話」1922(大正11)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,692 字 · 16 页
「いまごろ、お姫さまは、どうなさっていられるだろう。早く帰ってきてくださればいい。」と、明け暮れ思っていました。
女の乞食は、ふたたび、気ままな体になって、花の咲く野原や、海の見える街道や、若草の茂る小山のふもとなどを、旅したくなったのであります。
女は、柱にかかっている小鳥に目をとめました。その小鳥は、お姫さまがかわいがっていられた美しい小鳥でありました。小鳥は、かごの中でじっとして考えています。女は、顔をかごのそばに近寄せました。
「小鳥や、おまえも産まれたふるさとが恋しいだろう。さあ、わたしが、いまおまえを自由にしてあげるから、早く飛んでおゆき。」と、女はいいました。
そして、女は、お姫さまの大事にしていられた小鳥を、放してやりました。赤と、緑と、青の羽色をした美しい小鳥は、いい声でないて、お城の上を舞っていましたが、やがて雲をかすめてはるかに、どこへとなく飛び去ってしまったのであります。
お姫さまは、足にまかせて、いっても、いっても、はてしのない遠くへといってしまって、帰ろうと思っても、そこがどこやらまったくわからなくなってしまったのです。