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おひめさまとこじきのおんな
お姫さまと乞食の女
小川 未明
「童話」1922(大正11)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,692 字 · 16 页
お姫さまは、自分の国をばたずねても、だれもその名を知っている人はなかったのです。
「そんな国がどこか、遠いところにあるとは聞いたが、私どもはいってみたことも、またはたしてほんとうにあるのかさえも知りません。」と、人々は答えました。
お姫さまは、悲しくなりました。たとえこうしていることが、どんなに自由であっても、ふるさとのことを思い出さずにいられなかったのです。お姫さまは、いまは、ふるさとを恋しく思われました。晩方の雲を見るにつけ、空を飛んでゆく鳥の影を見るにつけ、ふるさとを思い出しては涙にむせばれていたのであります。
ある日のこと、お姫さまは、海の見える港のはずれで、独りマンドリンを弾き、ふるさとの唄をうたっていられました。そこは、ずっとある島の南の端でありまして、気候は暖かでいろいろな背の高い植物の葉が、濃い緑色に茂っていました。女の人は、派手な、美しい日がさをさして、うすい着物を体にまとって路を歩いています。男の人は、白い服を着て、香りの高いたばこをくゆらして歩いていました。
お姫さまは、太陽の輝いた、海の面をながめながら、心をこめて唄を歌っていられました。