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おひめさまとこじきのおんな

お姫さまと乞食の女

小川 未明

「童話」1922(大正11)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,692 字 · 16 页

青空文庫

するとお姫さまも悲しくなって、涙ぐまれたのであります。そして、やはり、あちらの空を見ていられますと、白い雲が夢のように飛んでゆくのでありました。

「おまえは、なにをそんなに考えているの? しかし、おまえはこんなに遠い他国にくるまでには、さだめしいろいろなところを見てきたろうね。町や、海や、港や、野原や、山や、河や、また珍しいふうをした旅人や、その人たちの歌う唄などを聞いたり、見たりしてきたにちがいない。しかし、わたしは、そんなものを聞くことも見ることもできない。」

お姫さまは、こういってなげかれたのであります。

お城の内には、さびしい秋がきました。つぎに木の葉のことごとく落ちつくしてしまう冬がきました。いろいろな木の実が紅く熟し、それが落ちてしまうと雪が降りました。そして、しばらくたつとまた、若草が芽をふいて、陽炎のたつ、春がめぐってきたのであります。

お城の内には、花が咲き乱れました。みつばちは太陽の上る前から、花の周囲に集まって、羽を鳴らして歌っていました。ほんとうに、のびのびとした、いい日和がつづきましたので、お城の門番は、退屈してしまいました。