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おかあさんのかんざし
お母さんのかんざし
小川 未明
「童話研究」1929(昭和4)年7月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,577 字 · 6 页
「あなたのお母さんは、いいかんざしをおさしですね。」といわれました。
「あれは、死んだおばあさんの形見なんです。」と、少年はいいました。
「そうでしょう。昔のものでなければ、あんないいものはありません。」と、Aくんのおばあさんは、感心されました。
Aくんの家で遊んで、少年は、帰り道にAくんのおばあさんのいわれたことを思い出して、
「どうして、昔のものは、そういいのだろう。きっと、昔は、世の中も美しかったにちがいない。自分の家も、昔はよかったのだが、いまは、貧乏になったのだ……。」と、思いました。そして、それが矛盾したようにも考えられたのです。
「先生に、聞いてやろう……。世の中が文明になって、かえって、品物が悪くなるということを?」
その後も、あわれな母と少年の暮らしには、変わりがなかったのでした。
ある日のこと、村へ、また行商人が、はいってきました。これは、前にきたのでなく、べつの男でした。そして、もっと、口が上手でありました。
「奥さん、まだお若いのに、こんな昔ふうのものをおさしになっては、おかしゅうございます。ここにこんな上等なさんご珠があります。足は金でございます。