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おかあさん

お母さん

小川 未明

「教育行童話研究」1938(昭和13)年5月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,614 字 · 4 页

青空文庫

「すぐに、ご飯にしてあげますよ。」と、おっしゃいました。

「うん、お母さんは、早いね。」と、正ちゃんが、いいました。

「だって、あんたが、釣りにいくんでしょう。」と、お母さんはおっしゃいました。

「どうして、わかったの? 勇ちゃんが、迎えにきた?」と、正ちゃんは、驚いて、ききました。

「いいえ、だれもきませんよ。お母さんには、なんでも、あんたのすることはわかるのです。」

「お母さんは、えらいなあ。」と、正ちゃんは、お母さんの顔を見上げました。

「えらいでしょう。だから、うそをいっても、お母さんには、すぐわかりますよ。」

「僕、うそなんかいわないよ。」

「だから、お母さんは、こうして、正ちゃんの思うようにしてあげるのです。」

まだ年のいかない正ちゃんは、おとなしくご飯をいただいていました。

お母さんは、昨夜、物置の前に、釣りざおが一本立てかけてあり、その下に、小さなバケツとみみず箱が、置いてあるのをごらんになって、

「おお、ちゃんと用意がしてあること。」と、なんとなくいじらしいような気がして、お笑いになったのでした。それで、きょうは日曜日だけれど、早く出かけるものと思って、いつもと同じように、お起きなされたのであります。