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きつねをおがんだひとたち
きつねをおがんだ人たち
小川 未明
「週刊家庭朝日」1950(昭和25)年1月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,266 字 · 5 页
村に、おいなりさまの小さい社がありました。まずこの話からしなければなりません。
昔、一人の武士が、殿さまのお使いで、旅へ出かけました。思いのほか日数がかかり、用がすんで、帰途につきましたが、いいつけられた日までに、もどれそうもありませんでした。そのうち、あいにく雪がふりだしました。北国の冬の天気ほど、あてにならぬものはありません。たちまち雪はつもって、道をふさぎました。
ある日の晩がた、ようやく武士は湖水のあるところまで、たどりつきました。おりから雪はやんで、西の山のはしが、明るく黄色にそまり、明日は天気がよさそうです。そして、行く手の村々は、白々とした雪の広野の中に、黒くかすんで見えました。
「ああ、この湖水がわたれるなら、早く帰れるだろうに。」と、湖水の方をながめて、ため息をつきました。
このとき、一ぴきのけものがどこからか飛びだして、雪をけたてて、湖水を横ぎり、たちまち姿を消してしまいました。
「や、いまのは、たしかにきつねであった。きつねが通ると、水は凍って、人も渡れるという。神さまがあわれんで、助けてくださるというお告げであろうか。」と、武士は思い、その夜はここで明かしました。