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くろがねてんぐ
くろがね天狗
海野 十三
「逓信協会雑誌」1936(昭和11)年10月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,616 字 · 18 页
しかし亡友の遺児であってみれば捨てて置くことは世間が蒼蠅かった。それで岡引の虎松に命じて探索させたのだがどうも分らない。この上は世間の口の戸を立てるために、毎年半之丞出奔の日が巡ってくると、華やかに虎松を呼びつけて、過去一年間の捜索報告を聞くことにしたが、例の思惑からして、虎松に対しては非常に厳重な尋問態度を改めなかった。さてこそ虎松は、捜索上の不運を慨くよりも前に帯刀の辛辣なる言葉を耳にするのを厭がっていたのであった。――
「虎松。――」
と帯刀は言葉を改めて呼んだ。
「へえ、――」
「半之丞が失踪いたして、今日で何ヶ年に相成るかの」
「へえ。――丁度満五年でござりますな」
「もう五年と相成るか」と帯刀は憮然としてその五ヶ年の年月をふりかえっているようであったが、やがておもむろに虎松の方に面を向け直し「こりゃ虎松。五年と申せば永い年月じゃ。これほど探しても分らぬものを、これからまた十年十五年と探すは無駄なことじゃ。今日限りかねて其方に申しつけてあった半之丞捜索の儀は免除してとらせる」
「ははッ。それでは捜索打切……」
「そうじゃ。われわれは充分出来るかぎりの捜索を行ったのじゃ。