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こころ

こころ

夏目 漱石

一个年轻人在镰仓偶遇了一位神秘的先生,两人渐渐成为好友,但先生总藏着一段不愿提起的过往。读完你会忍不住想:他到底背负着什么秘密?

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,915 字 · 322 页

青空文庫

返事をして出て来る奥さんの様子も甚だ素直であった。ときたまご馳走になって、奥さんが席へ現われる場合などには、この関係が一層明らかに二人の間に描き出されるようであった。

先生は時々奥さんを伴れて、音楽会だの芝居だのに行った。それから夫婦づれで一週間以内の旅行をした事も、私の記憶によると、二、三度以上あった。私は箱根から貰った絵端書をまだ持っている。日光へ行った時は紅葉の葉を一枚封じ込めた郵便も貰った。

当時の私の眼に映った先生と奥さんの間柄はまずこんなものであった。そのうちにたった一つの例外があった。ある日私がいつもの通り、先生の玄関から案内を頼もうとすると、座敷の方でだれかの話し声がした。よく聞くと、それが尋常の談話でなくって、どうも言逆いらしかった。先生の宅は玄関の次がすぐ座敷になっているので、格子の前に立っていた私の耳にその言逆いの調子だけはほぼ分った。そうしてそのうちの一人が先生だという事も、時々高まって来る男の方の声で解った。相手は先生よりも低い音なので、誰だか判然しなかったが、どうも奥さんらしく感ぜられた。泣いているようでもあった。私はどうしたものだろうと思って玄関先で迷ったが、すぐ決心をしてそのまま下宿へ帰った。