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ことのしんじつ

ことの真実

宮本 百合子

「婦人公論」1951(昭和26)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,470 字 · 15 页

青空文庫

自分たちの日々で、「みじめな朝鮮人」を見下げる習慣をもたされてきた一部の人々は、いまは日本も敗けてしまったのだからと、軍国主義権力の崩壊を、それによってこわされた自分たちの生活と同じ一つもののように思いこんで、われから隷属に屈していることはないだろうか。

夫婦の不和や家庭破壊の問題がおこったとき、どんな幼稚な身の上相談にしろ、先ずその原因を冷静につきつめて、と答えている。あのことも、このことも敗戦がわるい、というならば、どうしてその敗戦などという現象がおこったのか。そもそもの原因までさかのぼって、つきつめようとされなかったのだろう。どこでいつ行われようと無慙、野蛮でしかありようない現代のおそろしい兵器による戦争そのものがとりのぞかれようとしないならば、それにつづく事態ばかりをせめることは、歴史の発展のない、民族的自虐でさえある。歴史の現実にたいしてはっきりと目を開いていないそのような受け身の状態は、それなりまたずるずるとわたしたちの生活を犠牲にしてしまう危険をふくんでいる。すべての社会現象の全体の関係を人民生活の前に開いてみせず、任意な現象だけをきりとって、さまざまの粉飾でしめした方法こそ、天皇の神聖をかざした軍部のやりかたそのものであった。