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ことのしんじつ

ことの真実

宮本 百合子

「婦人公論」1951(昭和26)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,470 字 · 15 页

青空文庫

軍国主義の敗北とともに、満州、中国、朝鮮、台湾、樺太、さらに遠い南の果てから内地へ引きあげてこなければならなかった日本人男女は幾十万人あったろうか。台湾、朝鮮のような植民地または中国、満州のような半植民地に発展していた人たちは、その土地と社会が本来は他の民族に属するものであって、そこで日本人は侵略者の立場をもっている事実を忘れた、優越感に安住していたのではなかったろうか。

一九四五年八月十五日から植民地在住の日本人にあらわに思い知らされた敗亡する侵略者としての足どりは、それらの人々にいってみればさか恨みの感情をもたせたとも思われる。日本の軍国主義にだまされた自身のいきさつを思うよりも、こんな目にあうその苦しさを、敗戦と、いまは屈従から立って自分たちをかこむ土着民への恐怖と憎悪の感情にこらして、引あげの辛苦を経験した。これら幾十万の人々、特に引あげてきた婦人たちの身に刻まれているのは戦争の実体を究明しようとする意志よりも、引あげの日々を貫いた苦しさ、不如意、不安であろう。

「流れる星は生きている」の著者が良人とわかれて三人の幼子をひきつれていた若い母であったことは、引あげの辛苦もなみなみでないものにした。