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こま

こま

小川 未明

「小学四年生」1937(昭和12)年10月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,060 字 · 5 页

青空文庫

「こっちへくるときに、友だちにやってしまった……。なにしろ、十五の暮れに出てきたんだものな。あれから十年も故郷へ帰らないのだ。」

「それで、おじさんは、こっちへきても、べいをしていたのかい。」

「じょうだんな、そんな暇があるかい。小僧をしたり、職工になったり、いろいろのことをしたのさ。この商売をするようになって、昔、こまをまわしたことを思い出して、ときどきべいをするが、おもしろいなあ。」と、おじさんは、子供といっしょに遊ぶのが、なにより楽しみだといわぬばかりに、にこにこしていました。

「さあ、やろうよ。」

「よしきた! しんけんべい。」と、おじさんが、叫びました。

カチンと、みんなが、手から繰り出した、鉄砲だまのようなべいは、たがいにはじき合って、火花を散らしました。おじさんのべいは、なかなか強く、輪を描いては、うなりながら、三人のべいをはね飛ばしてしまいました。

「おじさんの角は、すげえな。」と、三ちゃんは、白目を、くるりとさせました。

「そうさ。お宮の石垣や、コンクリートの道で、みがいたんだものな。このべいには、だれにも負けないという信念が入っているのだ。