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さかずきのりんね

さかずきの輪廻

小川 未明

「婦人公論 9巻1号」1924(大正13)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,603 字 · 21 页

青空文庫

それで、彼は、こんどは、正直な人間に売らなければならぬと思いました。

「りっぱな店を張っている骨董屋のほうが、かえって、人柄がよくないかもしれない。だれか正直そうな古道具屋を呼んできて見せよう。」

彼は、そう思いました。

彼は、出かけてゆきました。そして、耳のすこし遠い、声のすこし鼻にかかる、脊の曲がった男を連れてきました。男は、無造作に、毎日、ぼろくずや、古鉄などをいじっている荒くれた手で、彼の出した、金銀細工の飾りとさかずきとを、かわるがわる取ってながめていました。

「こちらの飾りだけを×××××でいただきましょう。このさかずきは、どうでもよろしゅうございます。」と、古道具屋はいいました。

彼には、このとき、ふたたび田舎にいる時分、近所の物知りのおじいさんが、「これは、たいしたものではない、ただ古いからいいのだ。」といった、その言葉が思い出されたのです。

文明のこの社会に生まれながら、昔のものなぞをありがたがるのは、じつにくだらないことだと、彼は簡単に考えたのであります。

「このさかずきも、つけてやろう。」と、彼はいってしまいました。

古道具屋は、それを格別、ありがたいとも思わぬようすで、金銀細工の飾りといっしょに持ってゆきました。