轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
さかずきのりんね
さかずきの輪廻
小川 未明
「婦人公論 9巻1号」1924(大正13)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,603 字 · 21 页
わるとたいへんでございますから。」と、女房は、あるとき、彼に向かっていったのでした。
彼は、しばらく、黙って考えていました。そして、頭を上げて、おだやかな顔つきをして女房を見ました。
「注意をして、それでわったときはしかたがない。なるほど、このさかずきもたいせつな品には相違ないが、人間は、もっとたいせつなものをどうすることもできないのだ。こうして、このさかずきを愛撫する私どもも、いつまでもこの世の中に生きてはいられるのでない。さかずきも大事だが、だれの力でもそれより大事な自分の命をどうすることもできないのだ。そのことを思えば、なにものにも万全を期することはかなわないだろう。」と、彼はいいました。
長い間の江戸時代の泰平の夢も破れるときがきました。江戸の街々が戦乱の巷となりましたときに、この一家の人々も、ずっと遠い、田舎の方へ逃れてきました。そして、そこで、余生を送ったのであります。
江戸から、田舎へのがれてくる時分に、みんないろいろなものを捨てて、着の身着のままで逃げなければなりませんでした。女は、平常たいせつにしていた、くしとか、笄とか、荷物にならぬものだけを持ち、男は、羽織、はかまというように、ほかのものを持っては、長い道中はできなかったのです。