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さかだちこぞうさん
さか立ち小僧さん
小川 未明
「少年朝日 別冊冬の読み物集」1949(昭和24)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,958 字 · 14 页
「そうかなあ、空気が澄んでいるんだね。」と、まだ知らない北国をふしぎなところのように思うのでした。
秀吉は、自分の故郷について、みんながめずらしがると、とくいになって、
「ちょうど、大雨のあと、小石がたくさん、頭を地面へ出すだろう。あれと同じように、夜がふけると、青、赤、緑と、一つ一つ空に星の光が、とぎ出されるのさ。」と、秀吉はいって、さながら、わが家の前に立って、まのあたり空を見ているように、なつかしそうでありました。
やがて、みんなと別れて、彼は工場の二階の一室へもどりました。しかし、床についてからも、すぐに眠れませんでした。まくらに頭をつけながら、居酒屋の前に立つ、高いかしの木を目に浮かべていました。その木の下には、黒がすわっています。そして、黒は、毎日のように、ゆき来の旅人を見送っています。黒は、おれが、どうして、やってこないのだろうと思っている。秀吉は、いつのまにか泣いているのでした。目から落ちる涙が、まくらをぬらすのでした。
だんだん、日が短くなりました。いつしかひぐらしの声もきこえなくなりました。しかし、子どもたちも、あまり、それを気にとめるものがなかったほど、自然のうつり変わりは自然でした。