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さかだちこぞうさん

さか立ち小僧さん

小川 未明

「少年朝日 別冊冬の読み物集」1949(昭和24)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,958 字 · 14 页

青空文庫

と、武ちゃんが聞きました。

秀吉は、リヤカーを走らせながら、

「黒かね、りこうな犬だった。そんな、なになに種って、名のつく犬でなかったけれど、おれは、どの犬よりも、黒が好きなんだよ。」と、彼は、髪の毛を、風に吹かせながら、さもなつかしそうに答えました。そして、なにを思ったか、急に速力をゆるめ、ふり向いて、ペスを見ながら、

「この犬も、いい犬らしいな。」と、じっと、目の中を、のぞくようにしました。そこには、黒と共通のものがありました。なんと、その目は、すみきって、おとなしそうで、すばしっこそうで、なんでも人間のいうことが、わかるような、かしこそうにみえるではないか。

「犬って、みんなりこうなんだな。だから黒もペスも、同じくらいかもしれない。」と、秀吉は、いいました。

「犬って、みんなりこうなんだね。」

「どの犬も、人間なんかよりは、りこうだと思うよ。」

「人間よりも……。」

「そう、人間のように欲深でもないし、いちど信じれば、気変わりなんかしないからね。」と、秀吉は答えたのです。

二人は、そう聞くと、深くうなずかずにはいられませんでした。

「こんど、いつ国へ帰るか知らないが、どうか、それまで、黒がたっしゃでいてくれればいいが。